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袖すりあうも他生の嵐

嵐に癒され、大野智さんを尊敬する主婦のゆるいひとりごとです。

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若冲ミラクルワールド第2回:(大野智×辻惟雄)篇

若冲ミラクルワールド「第2回 命のクリエイター 超細密画の謎」
BSプレミアム  4月26日(火)午後9:00~10:29 より

(大野智×茂木健一郎)篇はこちら。


大野智×辻惟雄(美術史家。美術史にうもれていた若冲を再評価した若冲研究の第一人者)

大野:ボクは若冲っていう人はすごい自分に厳しい人だったのかなとも絵からみて思ったりもするんですけど。
辻:あることを成し遂げようとすると、ものすごく集中して一生懸命やるような、ものすごく真面目な人であり、しかし一方で大変ユーモアを持った、ユーモリストというのか、そういう面もあった人なんです。たとえばここに「貝甲図」というのがあるんですけどね。これも海辺に打ち寄せられて、引き潮でこう流された貝という見立てなんですけれども、こういうふうに真面目に描いているような絵でもねぇ、その中にも茶目っ気というか面白い遊びをしてるんですね。
大野:はい。

辻さんの指差すほうを覗き込む大野さん。

辻:波の下にちょっと貝が顔を出してるでしょ。
大野:はい。
辻:これが目でこれが口ですよね。
大野:はい。
辻:すると、お化けがすっと顔を出すんですね(笑)。
大野:ああ、お化けにも見えるという(笑)。
辻:ここんとこに大きな貝があるでしょ。
大野:そうですね。
辻:これもなんか変なんでねぇ。なんかみてると、これが歯に見えますよねぇ。
大野:そうですね、なんか。
辻:牛の頭の骨みたいな。
大野:そうですね。楽しんでるんでしょうかねぇ。
辻:楽しんでますね。
大野:なんかすごく、描いてる中でこういう発想が出てきたのかなぁとも思うんですけど。これ全部計算なんですか?
辻:あのねぇ、計算というよりもこういう風に見えちゃうっていうかねぇ描けちゃうんですよね。彼はときどき他の絵でもこういうことをやっています。
大野:はー、紅葉の赤い葉のやつ(紅葉小禽図)。あの完璧な。でもあれでも枝がこう(指で円を描きながら)丸まってるじゃないですか。
辻:あぁ、枝が丸まっているっていうのはねぇ(指で円を作りながら)縁起の良いっていうことだったらしい…。でも実際あんな枝あるんでしょうかねぇ。
大野:ボクも見たことないから。
辻:(いかにも楽しそうに笑う)
大野:でも、そういうことをやりつつ、他の紅葉の葉っぱは完璧だから。
辻:そうそう。
大野:それがボク、おかしくってしょうがない。
辻:おかしいねぇ(笑い)。やっぱり見てると笑えるところがあるでしょ。
大野:そうなんですよね。

画面は「群魚図」

辻:この親ダコと子ダコ。同じ形をして、この足にキュッとしがみ付いているなんていうのは。
大野:実際いないですもんね。これが好きですね、ボクも。
辻:そうですねぇ。
大野:そうするとユーモアがあった方なんですよね。
辻:そうです。いやー、本当に大野くんと私は半世紀ぐらい年が隔たっているんだけれども、それでいて同じ若冲のことでこんなに話し合えるのはうれしいことで。
大野:いえー、本当に。
辻:若冲っていうのはねぇ。あんたのように若い世代にもっと受け継がれ語り継がれていったら本当にうれしいことだなぁ。
大野:本当にこれ、知ってほしいんですよね。ただの絵じゃないっていう。  若冲が「動植綵絵」30幅で伝えたかったメッセージっていうのはいったい…。
辻:彼はそのことについて言葉ではなんにも言ってないんですよ。ただ相国寺っていう禅寺に奉納するって言ってるだけですけれども。ただ絵を楽しんで描いているだけじゃなくて、なんかもう一つ大きな目的があって描いているんだっていう気がしてきましたねぇ。「草木国土悉皆成仏」という言葉がありまして。若冲が描いたのは鳥であり魚であり虫であり花であり木であるという。そういうものは全部仏の世界、ひとつひとつにみんな仏が宿っているという考えなんですけど。そうやってみればですねぇ、あなたが言うようにブレがないように隅から隅まで全部描き尽くしたっていうのは、ひとつも逃すまいよと思ってね、描いていると、そういう風に私は思うんですけどね。
大野:もうだからあの全部、草だったり、鶏があり草があるけれども、それも全部仏なんだぞというメッセージだと。
辻:そうだと思います。
大野:だからムラがないんですよね。
辻:そうだと思います。
大野:はぁー、やっぱすごい。深いなぁ。いやー、でも、あの30幅を描いてる中でやっぱり若冲っていうのが描いてる10年間のうちでどんどんどんどんいろんなものが見えてきたんでしょうね。
辻:われわれが、いくら熟視しても見えないものが見えてくるということがあったでしょうね。
大野:はい。ムラがないっていう理由の一つに全部が仏、成仏できるっていう…。やっぱ、そこが強かったんでしょうね。
辻:そうそうそうそう。


このおふたり、対談の最後のほうは穏やかで温かく楽しげでありながら深くお互いの心を知っている親友同士のようなオーラを出していて、その会話に惹きこまれました。若冲の絵に出てくるあらゆるものに向けられたまったく手抜きのない完璧さは、「草木国土悉皆成仏」という日本古来の考えを突き詰めた上にあった。全部が仏。大野さんの曇りのない眼差しが見据えているのはまさにそこ。すべてのものに平等に注がれる真直ぐな眼差し。伊藤若冲も深いが大野智もまた深いです。

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